転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


121 この世界にも経験値ってあるのかな?



 サブジョブであるレンジャーのレベルが上がった理由。それは多分昨日のお兄ちゃんたちの狩りが原因だと思う。

 でもさ、昨日の狩りでは弱い魔物ばかりだけどお兄ちゃんたちといっぱい狩ったし、それらよりもうちょっと強いジャイアントラビットも狩ったから、それが反映されてるのならもっとレベルが上がるはずなのに1レベルだけってちょっと変じゃない?

 ドラゴン&マジック・オンラインの頃は1レベルから2レベルに上げるには、最初の村周辺の弱いモンスターを7〜8匹狩ればよかったんだよね。

 そう考えるとお兄ちゃんたちと一緒に持って帰れないほどいっぱい狩ったんだから、もっとレベルが上がっててもおかしくないと思うんだけど。

「もしかしてジャイアントラビットって、そんなに強い魔物じゃないのかなぁ?」

 確かに一角ウサギとかを結構な数を狩ったけど、別に20も30も狩ったわけじゃないから3レベルになるほど経験値がたまってなかったとしても別におかしくは無いと思うんだ。

 でも僕は最初に狩ったジャイアントラビットを入れたら、もっとレベルが上がっても良さそうなもんだけどなんて考えてたんだよね。

 でもレベルが2までしか上がって無いって事は、そんなに強くないのかも。でもさ、お兄ちゃんたちがわざわざ待ち伏せしてまで狩る魔物だし、一角ウサギとそんなに変わらない強さだなんて思えないんだよね。

「お兄ちゃんたち、反撃されないようにって最初に後ろ足に攻撃してたもん。一角ウサギ相手にはそんな事しないから、ジャイアントラビットは強い魔物のはずなんだけど」

 となると、別の理由があると思うんだよね。

 でも何が悪かったんだろう?

 そう思って、ジャイアントラビットの狩りを思い出す。で、出した結論と言うのが、

「そう言えば僕、あんまり役に立ってなかったなぁ」

 初めて待ち伏せの狩りに参加して戸惑ったせいで出遅れた上に、ショートソードでの狩りにも慣れて無かったからあんまり活躍できなかったのがその理由なんじゃないかって事。

「もしかするとゲームと違って貢献度で入る経験値が違うのかも」

 ドラゴン&マジック・オンラインではパーティーン入ってさえいれば、レベルとか貢献度とかに関係なく一度の戦闘でみんなが同じ経験値がもらえたんだ。

 例えばその戦闘で誰も怪我をしなかったらヒーラーは何もできないよね? でもだからと言ってヒーラーに経験値が入らなかったら誰もそんなジョブをやるはすが無い。

 そうなると強い相手と戦う事ができなくなるから、そんな事が無いようにこういうシステムになってたんだ。

 でも、この世界ではステータス画面に経験値って欄は無い。と言う事は、ゲームと同じように経験値に当たるものがみんな同じだけ入るわけじゃないのかもって僕は考えたんだ。

 そう考えると思い当たる事がある。ブラウンボアをやっつけた時、僕だけがすっごく経験値が入ってレベルが一気に10まで上がっちゃったのも貢献度によって入る経験値が違うからだって言うのなら納得できるんだよね。

「そうだよ。もしドラゴン&マジック・オンラインと同じなら、あの時僕だけに経験値が入るのはおかしいもん」

 パーティーを組んでるんだから、いくら僕しか攻撃して無いからって全部僕の手柄になるなんて事はゲームではありえなかったんだ。

 でも実際には全部僕に経験値が入ったんじゃないかって状況になってるんだから、多分そうなんだろう。

「そうなるとお兄ちゃんたちにくっついてって狩りをしても、レンジャーのレベルはあんまり上がらないって事だよね」

 賢者としてならともかく、レンジャーとして行動するのなら僕はただの足手まといでしかない。だからそんな僕がお兄ちゃんたちと組んで狩りに行っても、それ程多くの経験値は得られないと思うんだ。

「やっぱり弓の練習とかをした方がいいのかなぁ?」

 僕はまだ体が小さいからどんなに頑張って剣を振ってもお兄ちゃんたちより弱いし、楯も使えないから魔物の前に出て引きつける事もできない。となると当然貢献度も低くなるから経験値の量はどうしても減っちゃうんだよね。

 でも弓矢で後ろから撃てば牽制にもなるし、うまく当たれば結構なダメージを与えられるはず。

「あっ、でもそれなら魔法を使ってって言われちゃうか」

 う〜ん、となると弓の練習をしても無駄になっちゃうかもしれない。お父さんも、魔法が有るんだから行動の邪魔になる弓なんか持っていかない方がいいって言ってたもんね。

 じゃあ弓で経験値を稼ごうとするのも、パーティーのメンバーに迷惑をかけるってことになっちゃうのか。


 でも待って。それ以前に、そもそも経験値という考え方自体が違うのかも。

 だってステータス画面には経験値の欄が無いんだから、経験値というもの自体が無いと考えた方がいいのかもしれない。

 じゃあ、何でレベルは上がるんだろう?

 レベルと言うものがあるんだから、経験値じゃないにしても狩りをしたら何かが溜まってるはずなんだよね。でもそれが何かは解んない。

「お父さん達に聞いても解んないだろうなぁ」

 鑑定士じゃないとステータスを見る事ができないって言うし、その鑑定士もレベルとかジョブとかを見れる人と見られない人がいるみたいだもん。そんな状態で何でレベルが上がるのかが解ってる人、いると思えないんだよね。

 それだけにお父さんたちがそんな事を知ってるはずが無いんだ。

 でも、このことでひとつ解った事がある。

「僕、パーティーを組まない方がいいのかも」

 僕の狩りのやり方は相手に気付かれないように遠くから魔法で急所を打ち抜くって言う、FPSってジャンルのゲームで言う所のスナイパーってスタイルだ。

 でも、もしさっき僕が考えた事が正しかったとしたら、この方法で僕が狩ってしまうと一緒にパーティーを組んでる人には経験値に当たるものが入らないって事になるんだよね。

 なら僕と組むことで、その人は成長できないって事だもん。だったら初めから組まない方がいいと思うんだ。

 でもなぁ、パーティー組まないと森に行っちゃだめって言われてるし、何より1人で狩りするのって何かつまんなそう。

 昨日のお兄ちゃんたちと一緒に行った狩りはとっても楽しかったもん。だから、僕はやっぱりパーティーを組んで狩りをしたいんだよね。

 それにソロで動いた方がいっぱい狩れるかもしれないけど、もし自分より強い魔物と出合ったりしたら危ないもん。やっぱり狩りは誰かと一緒に行くべきだよね。

「魔法を使っても一緒に行った人がレベルアップできるような戦い方、考えなきゃ」

 今の狩りのやり方だけじゃなく、他の人を補助したり戦いやすい状況を作るような魔法の使い方もできれば一緒に狩りに行けるよね。

 それに同じように攻撃魔法を使うって言ってもそれに特化した魔法使いと違って、どちらかと言うと賢者は周りを補助をしながら攻撃もできる神官って役割のジョブなんだから、そういう風に動くのが本当の戦い方だと思うんだ。

 だから今みたいにマジックミサイル一発で倒すばっかりじゃなく、いろんな魔法を使って戦えるようにしないとダメだよね。

「取り合えずステータス画面に載ってる今使える魔法や村の図書館にある本に載ってた魔法をもう一度調べて、それを使ったらどんな事ができるか、一度考えてみないと」

 こうして僕は。自分の狩りのやり方を見直すことにしたんだ。


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